ピヴラッツ点滴静注液の勉強会

見聞きしたこと(勉強)

先日は脳動脈瘤のくも膜下出血後の血管攣縮に使うピヴラッツの勉強会がありました。
覚えることが沢山あったので、記憶が新しいうちにまとめておきたいと思います。

ピヴラッツ

効能・効果について

今まで血管攣縮に用いられていたエリル、オザグレルは「くも膜下出血後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善」でしたが、ピヴラッツは「~の発症抑制」なので、より積極的に治療が行えるとのことです。

投与方法について

発症から48時間内を目安として術後早期に開始

投与開始は発症から48時間以内を目安にします(多少過ぎても可)。その理由は、エンドセリン1がくも膜下出血の発症後すぐから活性化してくるので早めに投与すべきということです。このエンドセリン1という物質が血管収縮をさせる原因で、ピヴラッツは「エンドセリン受容体拮抗薬」という分類になります。エンドセリン受容体拮抗薬というのは、肺動脈性の高血圧症のトラクリアやアンブリセンタンと同じ分類のお薬になります。

発症15日目までで投与終了する

最大15日(30V)までですが、これは用法用量のところに「くも膜下出血発症15日目まで」と書かれており、これは投薬開始から15日ではなく、発症日から15日なのです。
例えば発症日は家で倒れてて、翌日救急車で運ばれてくも膜下出血と診断されピヴラッツ開始したとしましょう。この場合、開始したその日は2日目という数え方になります。他の薬のように「使用開始から〇日間」ではないので注意が必要です。

持続投与で残廃棄・フィルター・単独投与

ピヴラッツの使い方は300㎎(150mgバイアル2本)を整理食塩液500mlに加えて、17ml/時で持続投与です。こうすると「クラゾセンタンとして10㎎/時」になるのですって。

ピヴラッツ投与ガイドより

※中等度肝機能障害患者やリファンピシン併用時の減量方法も添付文書の「用法及び用量に関連する注意」に書かれています。

ピヴラッツ投与ガイドより

注意点としては0.2μmフィルターを通して投与することと、17ml/時だと30時間分ありますが、保存剤が入っていないので24時間の時点で残破棄することです。
(このフィルターですが、当院の病棟で普段使用している高カロリー用のフィルターと、単独であったフィルターが共に0.2μmでしたので、通常のものを使えばOKです)

そして配合試験の検証をあまりしていないので単独投与となっています。生食に溶かす理由も、他の配合変化が分からないためです。

副作用と併用注意

副作用で最も顕著なものが体液貯留だそうです。胸水(13.3%)・肺水腫(11%)・脳浮腫(0.5%)で、2割ほどの患者さんにはフロセミドを使用したそうです。
体液貯留してしまうなら生食500mlより少ない量の方がよいのでは?と思ったのですが、輸液量と関係ないところ(受容体から追い出されたエンドセリンが他所ではたらく)の作用で体液貯留が起こるのだとか。

併用禁忌はありませんが、併用注意はいくつかあります。
併用注意は従来の血管攣縮予防薬であるエリル・血管拡張薬(ニカルジピン等)・オザグレルと、リファンピシンなどのOATP1B1/1B3の阻害作用をもつ薬と、アミオダロンなどのQT延長を起こすことが知られている薬剤があります。

ピヴラッツ投与ガイドより

その他

⑤価格とDPC
1v80,596円で1日2V使うので161,192円です。
1日16万!高額ですね!
今のところDPCの包括評価の対象外とされ、ピヴラッツやそれに関連する薬剤は出来高算定することになっているそうです。

脳外科のある先生は、基本ピヴラッツ単剤で、スタチンやシロスタゾールをかぶせるか、重症ならそれにエリルも併用するか~…などとお話しされていたようなので、今後の処方を見ていきたいと思います。

  • 発症15日目まで
  • 減量基準
  • フィルター使用
  • 残廃棄

とりあえず調剤の時点ではこれらのことに注意しましょう。

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