外傷後の破傷風トキソイドは何回打ちますか?

医師から聞かれたこと
内科外来医師
内科外来医師

4日前に顔面受傷して今から破トキを打っても保険的に大丈夫ですか?

という問い合わせがありました。
怪我をした場合の破傷風ワクチンは保険適応になりますので、「大丈夫です」とお答えします。
何日以内でなければダメというしばりはありません※1

内科外来医師
内科外来医師

何回打てばいいのですか?

これは、時々聞かれる質問です。
添付文書には次のように書かれています。

6. 用法及び用量
初回免疫:通常、1回0.5mLずつを2回、3〜8週間の間隔で皮下又は筋肉内に注射する。
追加免疫:通常、初回免疫後6箇月以上の間隔をおいて、(標準として初回免疫終了後12箇月から18箇月までの間に)0.5mLを1回皮下又は筋肉内に注射する。ただし、初回免疫のとき、副反応の強かった者には、適宜減量する。以後の追加免疫のときの接種量もこれに準ずる。

7. 用法及び用量に関連する注意
7.1 接種対象者・接種時期
7.1.1 初回免疫と追加免疫を完了した者には、数年ごとに再追加免疫として、通常、1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。なお、再追加免疫の接種間隔は職業、スポーツ等の実施状況を考慮すること。
7.1.2 初回免疫、追加免疫又は再追加免疫を受けた者で、破傷風感染のおそれのある負傷を受けたときは、直ちに本剤を通常、1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。
7.2 医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。

沈降破傷風トキソイド添付文書より

小児の予防接種について勉強した方は7.1.2のところを見て「子供のころにワクチン打ってるはずだから、1回打てばいいんじゃない?」と思うのではないでしょうか。

でも実はこれちょっと不十分で…
免疫の有無によって、1回でよかったり、3回打った方がよかったり、打つ必要が無い場合もあったりするんですよ。
さて、ご自分の場合だったら何回打つのが一番いいか、皆さんは答えられますか?(・∀・)ニヤニヤ

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ご存じとは思いますが、まず破傷風について簡単にまとめます。

  • 土壌などに破傷風菌が存在し、小さな傷からも発病する※2
  • 破傷風毒素が神経障害を起こす
  • 日本では年間100人ほど届出※3があり、致死率は1~2割
  • ワクチンが有用
  • 1968年(昭和43年)から定期接種が開始された※4→DPT、DT、DPT‐IPVなど

外傷時に破トキの接種をするかどうかは、その人が基礎免疫を持っているかいないかで変わってきます。あなたは基礎免疫を持っていると思いますか?

こちらをご覧ください(全年齢ワクチン接種スケジュール
破トキが含まれる2種混合(DT)、3種混合(DPT)、4種混合(DPT-IPV)は子供のうちに複数回の定期接種が終わります(日本のスケジュールでは12歳ころが最終接種)。
そこで基礎免疫がつくので学生のうちは守られると思いますが、この免疫は10年で発症防御レベルを下回ると言われています。22歳以降は無防備…。

もし私が汚い場所で怪我したら?

40代の私はもう破傷風の基礎免疫はおそらく無くなっていますね。
医師に傷の状況を診ていただいて、破トキを打ちましょう!と、なるかと思います。

私の場合であれば何回打つのがいいか、田辺三菱さんのおくすり相談センターに伺ってみました(*^^*)↓

基礎免疫がない人の場合
1回だけ接種 → どれだけ抗体できるかデータなし
2回接種   → 1年は抗体維持できる
3回接種   → 10年保持できる

その後10年ごとに1回接種するとよい(これは自費)

なるほど。
もう免疫が残っていなさそうな私は、1回打っただけではどれだけ抗体ができるかデータがないそうです。最終接種から20~30年経過していると、1回打ってブースター効果が得られるかは明らかでないのですって。
ですから、確実に予防するためには3回接種した方がよいそうです。
(面倒なら2回でもいいかな…)

自分の母子手帳を見てみたら、4回打ってはいましたが最終接種が4歳でした※5(笑)
私は14歳から破傷風菌に対して無防備だったようです。

基礎免疫があるうちならば、10年ごとに1回接種すれば抗体を保持できるので、災害医療に従事する方や動物に触れる職業、怪我をするリスクの高い消防や自衛隊の方などは定期接種をされているようです。(添付文書の7.1.1参照)

具体例その1:中学2年生 うちの息子の場合

小学5年生の時に2種混合ワクチンを打ったばかりなので、最終接種から5年未満となります。この場合、接種する必要はないそうです。(できないわけではない)

具体例その2:小学5年生 うちの娘の場合

9年前に3種混合を打っていました。
最終接種から10年以内なので、外傷を受けたら1回打てばOKです。(その後10年抗体保持できます)
たまたまですが、12才になった今年は2種混合を打つ年なので、ちょうど市から問診票が送られてきています。怪我しなくても、今年打たなきゃ。

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整形外来の先生は慣れていらっしゃるんじゃないかと思いますが、今回は内科の先生からの問い合わせでこちらも勉強になりました。

抗破傷風人免疫グロブリンを投与することもあるのですが今回は割愛します。知りたい方は自分で調べてみてね。
(量や効果がはっきりしないのと、血液製剤のリスクを冒しても投与したいのは稀ですから)

さいごに
健康管理課の方は市の予防接種の方針説明会みたいなのに毎年行っています。そこで配布される予防接種のガイドラインを薬剤部にも1冊いただきました。この数年薬剤部は参加しなくなったのですが、勉強したい方は行ってみるといいと思います。

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※1…潜伏期間が3~21日程度なので、早めに打ちましょう
※2…汚いキズ 泥、糞便、土、唾液などで汚れた傷。刺し傷。組織欠損を伴う傷。異物、銃創、挫滅創、熱傷、凍傷による傷など。ただし接種対象はこれらの傷のみに限らない。
※3…破傷風は第5類感染症全数把握疾患なのです
※4…1967年(昭和42年)以前に生まれた中高年の方は基礎免疫がありません
※5…昔の接種スケジュールなのです

参考:「医療関係者のためのワクチンガイドライン」(日本環境感染学会2020)
ワクチン接種医へのQ&A
青木クリニックHP(免疫グロブリンについても)
大同病院HP(基礎免疫あるなしで分かれて見やすい)

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