SARS-CoV-2による感染症…つまりコロナの治療薬、ラゲブリオの調剤に携わったので、教わったことを忘れないよう記録しておきます。
これから携わる人も参考にしてください。
製剤写真
18歳以上 ラゲブリオ 1回800㎎を1日2回 5日間
1箱(本)が40カプセル入りで、ちょうど1人分の処方量となっています。
患者さんが1人いたら、1箱出るよ。
ちなみに、このボトルのまま薬袋に入れて患者さんにお渡しします。
(分包データがないのでメーカーはボトル調剤推奨)
90日の安定性はみとめられているので分包は必要性が高ければ施設判断でとなっています。
使用に当たって
重症化リスク因子
まず患者さんの選択からです。
ラゲブリオの添付文書には次のような記載があります。
5.効能又は効果に関連する注意
ラゲブリオ添付文書より
5.1 臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。[17.1.1 参照]
5.2 重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。
つまり、18歳以上の軽症~中等症で、重症化リスク因子を1つ以上有する患者が適応となるそうです。
この重症化リスク因子は、添付文書の「17.臨床成績」の表2に記載があります。
次のSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を1つ以上有する。
ラゲブリオ添付文書より
・61歳以上
・活動性のがん(免疫抑制又は高い死亡率を伴わないがんは除く)
・慢性腎臓病慢性閉塞性肺疾患
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
・糖尿病
軽症と中等症の定義も、添付文書の同じところ(「17.臨床成績」の表2)にあります。
以下の定義における、軽症患者又は中等症患者。
SARS-CoV-2による感染症の重症度の判定に用いられた定義は以下のとおり。
【軽症】①及び②を満たす
① 次のすべてが認められる 呼吸数が20回/分未満、心拍数が90回/分未満、SpO2が93%超c)
② 次のいずれも認められない 安静時又は労作時の息切れ、呼吸不全d)、ショック状態、多臓器機能不全
【中等症】①~③をすべて満たす
① 次のうち、1つ以上が認められる 労作時の息切れ、呼吸数が20回/分以上30回/分未満、心拍数が90回/分以上125回/分未満
② 次のうち、いずれかが認められるSpO2が93%超c)SpO2に関わらず、SARS-CoV-2による感染症のために4L/min以下の酸素投与を要する
③ 次のいずれも認められない 安静時の息切れ、呼吸不全d)、ショック状態、多臓器機能不全a) 具体的な症状の規定なしb) 咳、咽頭痛、鼻閉、鼻水、労作時の息切れ又は呼吸困難、筋肉又は体の痛み、疲労、発熱(38.0℃超)、悪寒、頭痛、悪心、嘔吐、下痢、嗅覚消失、味覚消失c) 室内気又はSARS-CoV-2による感染症以外の理由で酸素投与されておりSARS-CoV-2による感染症の症状発現以降に酸素量が増量されていない状態における数値d) 次の①~④を1つ以上要する場合:①気管内挿管及び人工呼吸器、②鼻カニューレを用いた高流量酸素療法(流量20L/min超、酸素割合0.5以上)、③非侵襲的陽圧換気、④ECMO
軽症か中等症でなければ医師は処方してこないと思うのですが、軽症で処方を出そうか出すまいか迷っていた医師に相談されて重症化リスク因子のところをお話した経験があります。
(多分先生も処方に同意が欲しかっただけでしょうけれど…)
そんなのがあったな~くらいに覚えておけば、添付文書に載っていますから必要時確認してくださいね。
用法・用量
通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。
症状の発症早期(5日以内)に投与する方がベネフィットが高い。
腎機能低下や肝障害患者さんでも用量の調節は不要です。
脱カプセルや簡易懸濁はやむを得ない場合を除きすすめられませんが、使用経験をMSDのQ&Aに載せてくれています。
同意書・説明文書
今はもう文書による同意取得は不要になりましたが、使う場合にはMSDのHPに同意説明書や患者向け医薬品ガイドが掲載されています。
不慣れな方は、これ見るだけでも禁忌や服用方法・副作用など簡単におさらいできますよ。
妊婦または妊娠の可能性がある方は禁忌ですし、女性は最終投与後4日間は避妊の必要性があるので注意してください。
※初回投稿 2022/4/25
記事修正 2024/10/8 リンク切れ修正、重症化リスク因子と同意書の2か所修正しました。