順天堂東京江東高齢医療センターの脳神経内科 志村秀樹医師のご講演を拝聴しました。
簡単なまとめになりますが、自分が興味を持った点について記録します。
画像診断すごいな
パーキンソン病の診断って、問診や症状の確認で行われると思っていたのですが(古い人間なもので…)
画像でハッキリと見えて診断がつくってすごいと思いました!
ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン)
脳神経に存在するドパミントランスポーター(DAT)をSPECT検査により画像化し、従来のCTでは分からなかったドパミン神経の減少・変性を捉えることができます。
具体的なイメージはコチラ
この画像検査から黒質線条体系の変性を伴うパーキンソン症候群とそれ以外の似たような症状の疾患(本態性振戦、脳血管性パーキンソニズムなど)を鑑別することができ、これによってレボドパの治療が有効か無効かが分かりますね。すごい…。
しかしながら、パーキンソン病とその他の黒質線条体系の変性を伴うパーキンソン症候群との鑑別はこの検査では難しいです。
その鑑別に有効なのは次の「MIBG心筋シンチグラフィ」です。↓
MIBG心筋シンチグラフィ
パーキンソン病を含むレヴィ小体病では心臓交感神経が減ることを利用した、ダットスキャンと同じようなシンチグラフィです。
こちらの検査ではパーキンソン病とそれ以外の疾患(黒質線条体系の変性を伴うパーキンソン症候群、多系統萎縮症など)を鑑別することができます。
薬の効果すごいな
病棟で昼食前に薬が切れて車椅子から動けなくなってしまった患者さんを見たことがありましたが、あえてその状態にするテストもあるんですね。
チャレンジテスト
チャレンジテストとかドパミンチャレンジテストといいます。
パーキンソン治療薬をテスト前夜から一旦やめて、薬がなくなった(動けなくなった)状態を評価します。そして投薬してどれくらい反応があるかをみるテストです。
今回の志村先生の勉強会の中で見せていただいた症例動画では、はじめ患者さんは薬が切れてぐったりと椅子にもたれており、立てないし、足を前に出すのもできないような状態でした。そこへメネシット200㎎を服用してもらったところ、立ち上がりもスムーズに、動けるようになりました。
(@ ̄□ ̄@;)!
いやドパミンの効果すごいな、と思いました。
ウェアリングオフを短くするために
パーキンソン病の勉強をすると出てくる「ウェアリングオフ現象」。
これを如何に短くするかが課題で、様々な薬を開発中だそうです。
レボドパ吸入パウダー(日本にはありません)
米国では吸入のレスキュー製剤があるのだそうです。
INBRIJA(レボドパ吸入パウダー)
メネシット半錠分くらいの量で、使うと速やかに動きが改善されると。患者さんにとってはとても手軽でいいですね!
持続皮下注入(未承認)
日本で認可にむけて頑張っているのがレボドパ/カルビドパ持続皮下注入療法。
液剤化するのがとても大変だったそうなのですが、24時間効くので画期的ですって。
近い将来、認可がおりることに期待です。
デュオドーパ配合経腸用液
今使える最先端はデュオドーパ配合経腸用液。
胃瘻を作って空腸までチューブを延ばし、ゲル状にした薬を1日16時間投与します。
(液剤化が難しかったのでゲル状になったんですね…)
ワンカセットに2000㎎(20錠分)のレボドパが入っています。カルビドパも入ってますよ。
当院の外来にも患者さんが来ていらっしゃいますが、志村先生は日本で一番デュオドーパを使っている先生なのだそうです。
ご講演の中では胃瘻を造設する様子を内視鏡カメラで捉えた映像を見せてくださいました。
デュオドーパを投与後、目に見えて効果が高いようですが、ただやっぱり胃瘻を作るのは大変なことなので現実的にはL-dopa+ドパミン受容体刺激薬での投薬といったところになるそうです。
「L-dopa製剤は効果が良いが持続時間が短い。
ドパミン受容体刺激薬は効果が弱いが持続時間が長い。貼付薬にすれば24時間効く」
そんなところで、次は新しいハルロピテープについてのお話になりました。
ハルロピテープ
2019年12月に発売された「ハルロピテープ」。
貼る+ロピニロールで、分かりやすいネーミングですね。
ニュープロパッチ(成分ロチゴチン)と違って基材にクッション性がありかぶれにくいようです。
(ちなみにニュープロパッチは感圧接着剤使用なので20~30秒しっかり押さえることで剝がれにくい)
ロピニロールはレキップCRとして1日1回内服の徐放製剤がありますが、内服困難になった場合に貼り薬があるというのは心強いです。
切り替え換算はこのような感じ。↓
志村先生がお話されていたことは
・ドパミン受容体刺激薬はある程度の量を使わないと効いてこない
・突発性睡眠がみられることあり自動車の運転等は×(レキップと同じ)
・貼付部位はどこでも…皮下脂肪が多目で動きの少ない部位がよい
(メーカー指導箋では胸部、腹部、側腹部、大腿部又は上腕部)
貼付剤併用のメリット
最後に、Q&Aコーナーで内服と貼付剤併用についてお話されていたところで、食事を食べられている方でも嚥下造影検査をすると嚥下が悪い方もいらっしゃるということを仰られていました。
薬が飲めない
↓
嚥下障害悪化
↓
飲めない
↓
栄養状態悪化
↓
転倒骨折
という負のスパイラルがありますので、貼付剤を併用していることでそのようなことを防げることもあるかもしれない、と。
ちょっと記録と記憶が曖昧ですが、志村先生は患者さんのQOLに寄り添った処方を考えられているのだなという印象を受けました。
おまけ:パーキンソン病治療のアルゴリズム
最後に、せっかくなのでパーキンソン病の治療アルゴリズムを載せておしまいにします。