当直明けのしまっちが「スローケーの切り替えについて」って書いた紙を持っているのが目に留まりました。夜間帯にそんな問い合わせでもあったのかしら。お疲れ様ー。
そしてお疲れ様ーって見送ったあと…しまっちが夜間にやったであろうカルテの記載をたまたま見つけました。「塩化カリウム徐放錠は粉砕できないのでアスパラカリウム散に切り替えました」これかぁ。
…おや?mEqが等量ではなくて半分になってるぞ。これは一体どういうことでしょう。
mEqで等量じゃあいけないのかなぁ?
そんなことを考えているうちに、別の患者さんが塩化カリウム徐放錠を簡易懸濁で投与している処方を見つけてしまいました(汗)。あ、これもアスパラカリウムに切り替えが必要なやつだ。
調べなきゃ(^_^;)
他のカリウム製剤に切り替える場合、成分が違うので単純にmgで切り替えられないことは知っていました。単純にmEqで等量換算できると思っていたのですが、調べてみると、そうではありませんでした。
ニプロESファーマのQ&Aに詳しく書かれていますがリンクフリーではなかったので、詳しく知りたい方は「カリウム 換算」などで探してもらえるといいかな(笑)
各カリウム製剤は常用量が異なる。
これは各製剤の生体内利用率や組織移行性等が異なるため!
常用量対比※から計算しよう☆
※常用量対比…1日用量の上限同士を治療学的に同等と考えて比例計算する(max量ではないよ)
当院の採用品だけですが表にしましょう。
1錠 | mEq/錠 | 1日常用量 | mEq/日 | |
アスパラカリウム錠 散 | 300㎎/錠 500㎎/g | 1.8mEq/錠 2.9mEq/g | 3~9錠/日 1.8~5.4g | 5.4~16.2mEq/日 5.2~15.7mEq/日 |
塩化カリウム徐放錠 | 600㎎/錠 | 8mEq/錠 | 4錠/日 | 32mEq/日 |
グルコン酸カリウム錠 | 5mEq/錠 | 6~8錠/錠 | 30~40mEq/日 |
この表で赤字のところが常用量の上限です。
この値で常用量対比を計算していきます。
塩化カリウム:アスパラカリウム=32:16=1:0.5
つまり
切り替え初回の目安として
塩化カリウム徐放錠1錠(8mEq)→半分だと4mEq→アスパラカリウム散(2.9mEq/g)約1.4g
となります。
同じように、グルコン酸カリウム:アスパラカリウム=40:16=1:0.4
練習問題的に
グルコン酸カリウム錠30mEqからアスパラカリウム錠へ切り替えるとすると
30mEq×0.4=12mEq
にすればよいので
12mEq÷1.8mEq/錠=約7錠
となるのです。
カリウムの細胞内移行と数時間後の体内保有率に関しては
アスパラカリウム錠 > 塩化カリウム
という裏付けがアスパラカリウムのインタビューフォームに載っています。
・カリウムの細胞内移行の指標としてウサギの赤血球を用いた実験で,赤血球内へのカリウム移行量は,L-アスパラギン酸カリウムの方が塩化カリウムよりも多かった(in vitro,in vivo)。
・カリウムの細胞内取り込みの指標として赤血球(ウサギ,ヒト)内への移行をみると,L-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムより良好である。
・イヌにL-アスパラギン酸カリウムをK として1mEq/kg/hr を2 時間静脈内持続投与において,3 時間後の体内保有率は約70%であり,塩化カリウム(約30%)より良好であった。
アスパラカリウム インタビューフォーム
アスパラカリウムは少ない量(mEq)でもよく働くというか
それぞれやっぱり常用量で使えばいいのネと思いました。
もちろん上記の計算は目安なので、切り替え後は実際のカリウム値の推移を観察して調節してください。
それにしても…
塩化カリウム徐放錠ってやつは、胃腸の粘膜障害を軽減させる目的でワックスマトリックス構造に分散させた徐放錠になっています。
それ故にゴーストピルも出るくらいなのに、よく簡易懸濁のシリンジがつまらなかったものだと驚きました。
砕いて小さくして熱い湯で溶けたのだろうか…(^^;;