ダプトマイシンの心内膜炎は右心系のみ

見聞きしたこと(勉強)

心内膜炎にダプトマイシンを使用している患者さんがいます。
よく見る処方はペニシリンGですが、この方はMRSAがでているんですね。

ICUの担当薬剤師さんが「ダプトマイシンは右心系の心内膜炎にしか使えないんですよー」ってお話してくれました。知らなかった…。
添付文書を確認すると「効能効果に関連する注意」のところに記載がありました。

5. 効能又は効果に関連する注意
5.2 右心系感染性心内膜炎にのみ使用すること。左心系感染性心内膜炎に対して、国内での使用経験はなく、海外でも有効性は認められていない。

それから「『感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン』を見るといいですよー」とも教えてくれたので、そちらも確認してみましょう。

ガイドラインの中から、ダプトマイシンに関するところを抜き出してみました。
まずは薬の選択に関する記述。

  • ダプトマイシン,リネゾリドは MRSA の治療薬として用いられるが,IE に添付文書上の適応を有するのはダプトマイシンのみである.
  • ダプトマイシンを用いた報告 では,58 例の IE 患者の 80% 以上で有効であったとする結果がある一方 ,単剤治療では十分な成績が得られないとの指摘もある
  • ダプトマイシンについては,実際の治療における高用量投与や併用療法に関する標準的といえる方法や評価が定まっておらず,現時点ではリネゾリド同様,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)での使用やサルベージ的な使用にとどまる.
  • MRSA に対して,国内で IE に適応を有する薬剤はバンコマイシンとダプトマイシンの 2 剤であり,いずれかを第一選択薬とする.ダプトマイシンは,バンコマイシンとの比較試験で非劣性との報告がある.
  • ダプトマイシンの国内での適応は右心系心内膜炎に対してであるが,左心系心内膜炎でも用いられている.

今回の患者さんはサルベージ的な使い方みたいです。(詳しくは忘れてしまいましたが腎機能悪いとかVCM使えないとか、なんだか難渋しているようなお話でした(;^_^A)

投与期間について

  • 投与期間は血液培養の陰性化後 4 ~ 6 週間とし,人工弁 IE では 6 週間以上,8週間を目安とする.

用量について

  • ダプトマイシンを選択する場合,1 回8 ~ 10 mg/kg,1 日 1 回(保険適用外)で開始する.1 回 6 mg/kg,1日1 回投与より,8 ~ 10 mg/kg の高用量のほうが高い有効性が認められており,≧ 10 mg/kgを推奨する意見もある.
  • 疣腫には 1010 CFU/mL を超えるきわめて多量の菌が存在していることから,長期の治療期間中にダプトマイシン非感性株が出現することが報告されている.そのため,高用量投与は治療成績を向上させ,非感性株出現を抑える可能性がある.
  • ダプトマイシンの MICは施設によってはルーチンに測定されないこともあるため,確認が必要である.

非感性株を抑えるために,ダプトマイシンにβラクタム系薬やアミノグリコシド系薬,リファンピシン,ホスホマイシン,スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤の併用が有用とする基礎的,臨床的検討もあるようで、その用量に関してはガイドラインに使用例が紹介されています。

MICに関しては,バンコマイシンによる治療歴を有する例やバンコマイシン治療失敗例において,バンコマイシンの MIC が≧ 4μg/mL の VISA 株ではダプトマイシンの感受性が低い可能性があるため ,ダプトマイシン選択の際は注意を要するという注意書きもありました。

最後に副作用について

  • ダプトマイシンの副作用として血中クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇や好酸球増多があり,好酸球性肺炎が報告されている.週 1 回以上の CK 値の確認を行い,合併症に留意する.

大体こんな感じですが、興味のある方はガイドラインに身体所見とか治療方針とか菌種別なんかも載っていますのでぜひご覧ください。

あ、そうだ。
ガイドラインを探すのにお薦めのサイトが「Mindsガイドラインライブラリ」です。
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